紅茶の産地

【紅茶の産地】スリランカ(ウバ,ヌワラエリア,ディンブラ,ウダプセラワ,キャンディ,ルフナ)

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スリランカ

スリランカの紅茶

スリランカは、インドの南東部、インド洋に浮かぶ北海道より少し小さめの島国です。1948年独立当時はセイロンと呼ばれていました。ですから、「セイロンティー」というのは、この国のお茶のことです。

島の中央部から南部にかけては、2000m級の山脈が連なっています。紅茶の島、紅茶の国として世界的にも有名ですが、もともとプランテーションで栽培されていたのは、コーヒー。ところが、19世紀の後半に病害が発生してコーヒーに壊滅的な被害が発生。かわって、生産が定着していったのが紅茶でした。

やがて世界でも有数の紅茶の生産地となり、現在の生産量は年間約30万t、輸出量は世界一となっています。日本に輸入される紅茶の6割以上は、スリランカ産といわれます。最近は中東で低地産の紅茶が人気を集めており、全体の半分ほどを占めるようになっています。

年間を通して、オーソドックス製法による紅茶の生産が行われています。

スリランカ

標高によって分かれるスリランカのお茶

スリランカの茶葉は、産地の標高によって区別されるのが特徴です。

  • 1200m以上の高地で作られるのが「ハイグロウンティー(高地産)」です。
  • 600~1200mで作られるのが「ミディアムグロウンティー(中地産)」
  • 標高600m以下の低地で作られるのが「ローグロウンティー(低地産)」

標高が高くなるにつれて、中国種が多くなり、その品質は透明感のある赤色から橙色の水色を呈します。また、香り高く、強くさわやかな渋みがあるのが特徴です。一方低地ではアッサム種が多くなり、水色は、濃い赤色から黒っぽい赤色となりますが、渋味は強くありません。インド同様、著名な産地がたくさんあります。

ハイグロウンティー(高地産)

ウバ Uva

地図ウバ

紅茶の銘産地、ウバは、スリランカの中央から南部へと広がる山岳地帯、その東側の斜面にあります。茶園や工場は、その海抜1000~1600mに点在しています。

栽培面積は、およそ5万haで、世界三大銘茶の一つです。

“ウバの紅茶”は、

ハプタレHaputale、バンダラウェラBandarawela、マルワッタバレーMalwatte valley、ウエリマダWelimada

といった広い範囲の産地のお茶をさします。

スリランカは、11~2月に北東モンスーン、5~9月に南西モンスーンの影響を受けます。その中間の3~4月、10~11月は、多雨期です。東側のウバでは、7~9月に吹く南西モンスーンの期間中、乾いた風が吹き、ウバの茶を良質なものにしてくれるのですが、特に、乾燥した良いお天気が40日以上続いた最後の2週間には、他産地にはない独特のウバ・フレーバーをもったクオリティーシーズン茶ができるのだそうです。

ウバという名前は、険しい山や谷に吹きすさぶ風の音からつけられたといいます。ウバには、仏教寺院が多く小乗仏教を信仰するシンハラ人の巡礼の地としても有名です。1890年、トーマス・リプトンがウバの茶園を買収すると同時に、未開拓地を茶園に変え、製造設備の整った工場を建設、ウバ産の紅茶の増産を開始しします。これが、今日の「リプトン」とともに「ウバ」の繁栄の礎となりました。

一年を通して茶の生産が行われており、特に、多雨の影響を受ける季節は量産期となります。ローターベインという、切揉機を使用するセミ・オーソドックスといわれる製法が主流。茶葉は茶褐色、水色は明るい真紅色から橙色です。さわやかな鋭い渋み感と、ウバ・フレーバーと呼ばれるバラ香と、メチルサルチル系の独特の芳香をもつことが特徴です。ベストシーズンは、7~9月。バランスが取れた上質なものには、カップの縁に「ゴールデンリング(コロナ)」と呼ばれる金色の輪が見られることで有名です。

ヌワラエリア Nuwara Eliya

地図ヌワラエリア

ヌワラエリアは、標高2000m以上の台地にあり、スリランカでは最も高い標高にあるお茶の栽培地です。栽培面積は、2000haとあまり広くはありません。ここには、スリランカ最高峰のピドルタラガラ山(2524m)があります。赤道にも近いため日中の日差しは強いのですが、標高が高いため夜間は逆に急激に冷え込みます。加えて、そこに吹き付ける乾いた風が、独特の香味を醸し出す紅茶を作りだすといわれています。

クオリティーシーズンは、1~2月と6~7月の2回です。年間の平均気温は、16℃、冬は10℃以下に下がり、霜が降りることもあります。

ヌワラエリアは、「台地の上の街」という意味があります。かつては、イギリス人のリゾート地としても栄え、「リトル・イングランド」とも呼ばれました。今でも、英国風の建物や施設が残り、当時の俤がしのばれるスリランカでも人気の観光地です。

1840年代のはじめに、実験的に茶栽培がはじまり、80年代には紅茶製造のための機械や設備が整えられていきました。紅茶は、ほぼ年間を通して生産されています。

中央山脈の最も高いところにある産地なので、年2回のモンスーンの影響を受け、ウバやディンブラのクオリティーシーズンとは、微妙に時期がずれますが、1~2月と6~7月に生産されるものの品質が最も優良であるとされています。

冷涼な地域にあることから、発酵がなかなか進まないという環境にあります。それが、製造方法にも影響し、オーソドックス製法で行う場合と、ローターベイン切揉機などを利用するセミ・オーソドックス製法で行う場合があるなど、違いがあります。このように一般的に発酵がやや浅いので、茶葉は緑色がかった明るい褐色、水色は淡いオレンジ色です。

緑茶を思わせるさわやかな渋みと、コク味に富んだ飲み口、そしてグリーン・ノートと優雅な花の香りがあるのが特徴です。

ディンブラ Dimbula

地図ディンブラ

ディンブラは、峻険な山々が連なる中央山岳部の西側斜面に位置しており、険しい地形の栽培地です。標高1100~1600mの範囲に、茶園と工場が点在しています。

“ディンブラの紅茶”は、

最も標高の高いハットンHatton、ディコヤDickoyaから、

ヌワラエリアの西端タラワケレTalawakelle、ナヌオヤNnuoya、マスケリアMaskeliya

南端のボガワンサラワBogawanthalawa

といった広い範囲の地域で生産されるお茶をさします。

11~2月の北東モンスーンは、東側には多くの雨をもたらしますが、西側には乾いた風があたり、茶葉はじっくりと成長、香味ともにすぐれたクオリティー茶を生産します。クオリティーシーズンは、1~3月です。4~6月、10~11月の雨季には、茶樹の生育が早く、量産期となります。セミ・オーソドックス製法が主流で、クオリティーシーズンには、オーソドックス製法も見られます。

茶葉は、明るい褐色から黒褐色、水色は赤褐色または赤橙色です。爽快な渋みと、優雅で芳醇な香りが特徴で、香り、コク、渋み、水色ともにバランスが取れたお茶です。

栽培面積は12万?、ハイグロウンティーのなかでは、最も生産量が多く、典型的なセイロン紅茶としてなじみ深いものです。

ウダプセラワ Uda Pussellawa

地図ウダプセラワ

ハイグロウンティーの産地で、中央山岳部の東側、ウバとヌワラエリアにはさまれた位置にあります。茶園や製茶工場は、標高1300~1600mの位置にあります。付近にあるマツラタMaturata、ラガラRagala、ハルグラノヤHalgranoyaも、この地域に属します。

ほぼ年間を通して生産されますが、季節と地域によって、ウバに近い品質ものと、ヌワラエリアに近い品質ものとが生産されます。

茶葉の外観はやや明るい褐色、水色は淡い褐色から赤褐色、さわやかな渋みと、花の香りをもっています。7~9月、1~3月には高い品質のお茶が生産されます。

ミディアムグロウンティー(中地産)

キャンディKandy

地図キャンディ

標高はおよそ660~1300m、中央山岳部の中腹域にあたります。ちょうど、セイロン島のおヘソのような位置ですね。

耕作地は、キャンディ地域から、それらに連なるコットメールKotmale、ガンポラGampola、ナワラピティアNawalapitiya、プセルワPussellawaに及びます。

この地域は、山並みをぬって吹く風の影響で、年間降水量は2000mm前後、平均気温も25℃前後と年間を通して穏やかな気候となっています。最高でも30℃を超えることはあまりなく、冬でも20℃前後ですから、大変すごしやすい地域です。

キャンディは、仏歯寺(シャカの歯を祀る寺)や、歴史的な文化遺産も多い風光明媚な観光地として人気が高く、多くの外国人が訪れます。

気候的の変化があまりない地域なので、降雨量の多くなる4~5月、10~11月にやや量産されますが、各月平均した生産量となっています。

オーソドックス製法が主流ですが、一部ではわずかにCTC製法も行われています。

茶葉の外観はやや黒味を帯びた褐色、水色はやや濃い赤から暗い赤色、渋味は穏やか、芳醇な香りという特徴は、ミディアムグロウンティーの典型といわれます。ハイグロウンティーには、ウバやディンブラなどの産地名を冠した製品が多いですが、「キャンディ」を冠した紅茶はあまりみられず、生産品の大半は、ブレンドに用いられます。

ところで、このディンブラには、「紅茶の神様」「セイロン紅茶の父」と呼ばれる人物が眠っています。

19世紀後半にコーヒーのプランテーションが壊滅した後、お茶の栽培を成功させ、スリランカの産業をコーヒーから紅茶へと転換させたといわれるほどの功績をのこした、ジェイムズ・テーラーです。スリランカのお茶の歴史は、まさにこのキャンディから始まったといってもよいでしょう。

ローグロウンティー(低地産)

ルフナ Ruhuna

地図ルフナ

ルフナは、シンハラ語で「南」という意味で、特定の地名ではありません。ルフナと呼ばれるお茶の生産地は、スリランカの南部、標高600メートル以下の地域です。沿岸の平地にある茶園から、南端のシンハラジャSinharajaの熱帯雨林まで、広範囲に及びます。

4~6月、10~11月が雨季にあたります。この地域は、高温多湿で茶の生育が早いので、およそ一週間ごとに茶摘みが可能となり、年間を通じて生産が行われています。

また、中央山脈の南西裾野に広がるラトナプラやサバラガムワ州も近年、ローグロウンティーの産地となってきました。典型的なオーソドックス製法であり、ルフナを含めたスリランカのローグロウンティーの需要は、近年高まってきています。

日本では、スリランカのローグロウンティーは、あまりなじみはありませんが、その生産量は、スリランカの半分を占めるまでに至っています。

高温多湿の気候は、茶葉の発酵にも影響を与えます。外観は、強い発酵を反映し、黒から黒褐色で、水色は濃赤褐色です。香味は、「アツサム茶のようなセイロン茶」とも呼ばれ、あまり強くありません。ややスモーキーな香りがします。渋みは少なく、十分なコクがあるのが特徴です。

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