伝統的な「オーソドックス製法」
萎凋(いちょう Withering)
茶葉を加工する最初の作業は、「萎凋(いちょう)」です。これは、生茶葉を萎(しお)れさせることです。どんな植物の葉でも、摘み取った宇都に放置すれば、萎れてきますね。水分が減少していくためです。これによって、茶葉がもみやすくなります。
「自然萎凋(日陰に干しておき自然に萎れさせる)」と、「人工萎凋(温風をあてて人工的に萎れさせる)」との2つの方法があります。現在では、「人工萎凋」が主流になっています。この作業で、茶葉の水分は、60%程度まで減少します。
揉捻(じゅうねん Rolling)
萎凋させた葉を、今度は揉みます。これを「揉捻(じゅうねん)」といいます。手で揉むことによって茶葉の細胞組織が破壊されると、茶葉から汁が出てきます。
これが空気に触れると、発酵(酸化)がはじまります。
発酵(Fermentation/Oxidation)
生茶葉は、すでに「萎凋」の段階から少しずつ発酵(酸化)が始まっています。しかし、「揉捻」の工程を経ると、一気に発酵(酸化)が促進されることとなります。
もみ砕いた葉は、適当な厚さに広げて約2時間程度かけて発酵(酸化)を促進させます。このときの室温は25℃、湿度は90%。
しだいに茶葉の色は、緑色から黄味を帯びていき、やがて赤く変色していきすま。そして、最終的には褐色へと変化します。
乾燥(Drying)
十分に発酵させた茶葉は、次に乾燥の工程へ移ります。100℃前後の熱風をあてて、茶葉の水分が3~4%になるまで乾燥させます。これによって発酵(酸化)が止まります。
茶葉は、乾燥すると褐色となり、硬く縮みます。これで、紅茶が完成。このような出来たての紅茶を「荒茶」と呼ぶそうです。
紅茶の製造において、この工程は最も大切な作業とされています。長い経験を積んだ責任者が、「萎凋」からの状態を総合的に判断して、温度や時間を調整するのだそうです。
クリーニング(Cleaning)
できたての「荒茶」には、繊維や木茎、かたい葉脈、粉じんなどのゴミが混入していることもあるので、これを取り除くために篩(ふるい)にかけます。機械化されていますが、手作業で行うこともあるそうです。
等級区分(Grading)
「荒茶」は、茶葉の大きさがそろっていません。そこで、篩(ふるい)にかけて、グレード(つまり、大きさ)ごとに区分するのです。いよいよ、あとは包装を待つばかりの「仕上げ茶」となります。
袋詰め(Packing)
紅茶の茶葉は、それぞれサイズごとに貯蔵庫で一時保管され、出荷を待ちます。
機械化されたCTC製法
「萎凋(いちょう)」までは、オーソドックス製法と同じです。
「Crush(つぶす)」「Tear(引き裂く)」: 萎凋させた茶葉を、2本の速度の違うローラーに巻き込ませていきます。葉をつぶし、切断するのです。ローラーの表面には、細かい歯が刻まれていて茶葉の細胞組織を破壊しやすい構造になっています。茶葉は、細かく砕かれてドロドロの状態になります。
「Curl(粒状に丸める)」: ここで、十分に茶汁を絞りだし、その茶汁を茶葉に付着させながら粒状に丸めていきます。
成形後は、オーソドックス製法と同じです。茶葉は、大きさによって選別されます。
この工程を見てもわかるように、できあがる茶葉は、その原形をとどめてはいません。CTC製法の紅茶の特徴は、お湯を注いだときに、より早く紅茶の成分が抽出されることです。もともと、大量需要に対応することを目的として考え出されました。CTC製法では、茶葉がすりつぶされるので、茶汁が茶の繊維によくからみついています。そのまま状態のまま乾燥した茶葉ですから、茶液を短時間で抽出できることができるというわけです。
安価で、ティーバッグなどに用いられており、ケニアの紅茶はほぼ100%、インドでも約90%がこの製法で占められているといわれます。
摘採(Plucking 茶摘み)は、重労働
茶葉は、「一芯二葉」または「一芯三葉」で摘まれますが、これは基本的に手作業で行われます。東南アジアなどのプランテーションでは、女性でも、1日に20~30㎏の茶葉を摘むといわれますが、茶葉1㎏には2,000~3,000枚の茶葉が必要です。単純に計算しても、20㎏×2000枚=40000枚の葉を摘むことになりますから、熟練の技が必要な重労働であるといえますね。
茶葉を紅茶に加工することは機械化できても、茶摘みだけは人の手になるのですね。摘んでいる人たちの苦労に感謝しながらいただきます。