ティーバッグの発明はイギリス人?
日々、気軽に飲む紅茶はティーバッグで、という人も多いのではないでしょうか。何より、茶葉の始末が簡単というのは最大の魅力ですよね。大量生産のお茶なので、リーズナブルというのもうれしいところです。手軽ですがきちんと入れれば、おいしいのもさらに○(おいしいティーバッグの紅茶のいれかたはこちら)。
では、このティーバッグ、いつごろから一般的なものになったのでしょう。
一説によると、19世紀末にイギリス人が発明したようなのですが、伝統を重視するイギリスでは評価されず、商品化もされなかったといいます。
アメリカで大ブレイク
イギリス人の発明とは別に、それより少し遅れた20世紀初め、アメリカでもティーバッグが登場しました。とはいうものの、もともと手軽にお茶を入れることを目的として開発されたものではないようです。
レストランやホテルに紅茶を卸していたニューヨークの茶商、トーマス・サリバンという人物は、サンプル用の紅茶を配布する際に、絹のガーゼでつくつた小袋に紅茶を詰めて送っていました。そうしたなかで、効率が重視されるレストランやホテルでは、この小袋が大変便利であると評判になります。
そこで思わぬ注文が舞い込んだのです。
肝心の紅茶ではなく、「小袋」が欲しい、という注文でした。そこでサリバンは、「小袋入りの紅茶」の商品化に取り組み、大ヒット商品となったわけです。生き馬の目を抜くような勢いのアメリカの人たちの間に、合理的で効率がよいティーバッグが普及するのにさして時間はかかりませんでした。
こうして、レストランやホテルに卸されていたティーバッグの紅茶は、家庭にも普及、第二次世界大戦後の1950年にはついに家庭用の紅茶の8割近くをティーバッグが占めるというまでになり、現在では世界中の人々に愛用されるものとなっています。
発想の転換!アイスティー
ティーバッグがアメリカで流行する少し前、1904年夏、ミズーリ州で「セントルイス万国博覧会」が開催されます。来場する大勢のお客さんたちに、イギリス人のリチャード・ブレチンデンは、紅茶を販売していました。
ところが、季節は真夏。しかも、その炎天下。熱い紅茶になど、目をくれる人はありません。そもそも冷凍技術が発達する以前に喫茶が始まった紅茶ですから、お湯でいれるという以外の発想が、人々にはありません。紅茶は熱いものと決まっています。暑いときに熱いものをあえて飲むケースもないわけではありませんが、誰もが好むことではないですので、当然ながら売れるわけはないですよね。
そこで、困った彼は、紅茶のカップに氷を浮かべて売り出してみました。すると、これが爆発的な人気に。
当然ですね。
こうしてアメリカの人々の間には、アイスティーが普及していきました。現在でも、アメリカの人たちが紅茶を飲むときには、アイスティーにすることのほうが多いのだそうです。
興味深いことに、当時のイギリスではこれは不評で、見向きもされなかったといいます。ティーバッグの件もそうですが、さすがに歴史と伝統を重んじるイギリス人。伝統的な紅茶を楽しむ文化の中には、確かに合理性や効率は不要なもの。
その点、自らの力で独立を勝ち取り、常に時代の先端を行こうとするアメリカの人々にとっては、ティーバッグもアイスティーも、至極理にかなったものだったということなのでしょう。
根は同じながらも、歴史をどう歩んだかによって、お茶の楽しみ方も違うというのは面白いですね。