アフリカの紅茶
アフリカと言えば、野生の王国。資源も豊かで、農作物と言えばガーナの「カカオ」。
……ぐらいの知識しかなかったので、
アフリカが、実は世界的なお茶の産地であることを初めて知りました。アフリカのお茶は、ルイボスティーだと思っていました。
とはいうものの、アフリカ全土でお茶の栽培が行われているわけではありません。アフリカの紅茶の産地は、主に大陸東部です。アフリカの紅茶生産は、20世紀になってからのことですから、まだ歴史が新しいといえます。多くは、イギリスの資本によるプランテーションによって開拓されていきました。
第二次世界大戦後は、各国が独立を果たしていきます。
そうした独立国では、政府の支援を受けつつ小さな農園が増加していき、プランテーションに拮抗するまでに至りました。アフリカ全体での紅茶の生産量は、約57万t、そのほとんどがCTC製法で生産されています。
ブレンドに利用されるなど、最近、日本でも輸入が多くなってきています。茶葉の産地チェックをすると比較時よく見かけますね。
ケニア Kenya
ケニアはまさにアフリカの代名詞のような、野生動物の王国。たくさんの自然公園があり、生き生きとした動物たちの姿を見ることができる観光地としても有名ですね。1963年に独立しました。
東アフリカのケニアは、実は国土の大部分が、標高1100~1800mの高原地帯にあります。ですから、赤道直下に位置していますが、気候は冷涼で湿潤、お茶の栽培にも適しています。ケニアの紅茶は、グレート・リフト・バレーの東西両側と、赤道沿いの標高1500~2700mの高地で生産されています。
ケニアは、イギリスの植民地でした。1902年、ケニアにインドから初めての茶樹が持ち込まれます。この茶樹は、今でも残っているのだそうです。
イギリス資本による大規模なプランテーションは、第二次世界大戦後まで拡大します。しかし、独立後、現地のケニアの人々による小規模の農園が普及しました。こうした茶園を支援するため、「ケニア紅茶開発局」が設立されます。その結果、現在では小規模農園の生産量が大幅に増え、全体の60%を超えるまでになりました。
11~3月の北東モンスーン、5~9月の南東モンスーンの影響を受け、茶園では、1~2週間の間隔での茶摘みが可能です。ほぼ年間を通じて、安定的に紅茶の生産が行われています。
現在では、ほとんどがCTC製法で、大半がティーバッグ用の原料茶としてイギリスやエジプトなどを中心に輸出されています。日本でも、よく見かけるようになりました。茶葉の外観は、黒味を帯びた褐色、水色は暗赤色です。バランスが良く、さわやかですっきりとした香味、適度な渋みとコク、そして香りのお茶です。2~3月にかけて生産されるものが、良質といわれます。
マラウイ Malawi
大地の割れ目、「大地溝帯」。マラウイは、アフリカ南東部の「大地溝帯」に位置する内陸国です。変化にとんだダイナミックな地形が特色で、国土のおよそ1/5は、湖や川で占められます。熱帯に属しますが、高地は冷涼で、熱帯モンスーンにも属しています。
5~10月は乾季ですが、年間降水量は、800~2000mm、夏の気温は17~29℃、冬は7~23℃と、地域の気候差が大きい国でもあります。紅茶は、標高400~1300mの高地で栽培されているのですが、ケニアやタンザニアなどと比較すると、低めです。
マラウイの紅茶栽培の歴史は、アフリカの紅茶栽培の歴史のなかでも最も古く、19世紀後半からお茶の栽培が始まったといわれています。もともとは、スリランカ同様、コーヒーのプランテーションが広がっていました。しかし、これもまた害虫の発生により甚大な被害を出したため、茶の栽培に転換されます。
やがて20世紀後半には、マラウイの主要輸出品となるまでに紅茶産業は成長しました。お茶の栽培は、通年でおこなわれますが、ベストシーズンは雨季に入る12~4月です。この5ヶ月で生産される紅茶は、年間生産量のおよそ8割ほど。
製造は、LTP製法(CTC機ではなくフードプロセッサーのような機械を使って茶葉を破砕する方法)で行われています。
茶葉の外観はやや明るい褐色、水色は鮮やかな真紅色です。軽いさわやかな渋み、ソフトな口当たりが特徴で、ティーバッグの原料として他の紅茶とのブレンドに使用されることが多いようです。
タンザニア Tanzania
北東部にアフリカ最高峰のキリマンジャロ(5895m)、北部にビクトリア湖、西にタンガニーガ湖といった雄大な自然を抱く国です。サバナ気候に属していますが、南部と北部には高地が広がっています。
独立後は政府の援助により、小規模農園が生産を高めてきました。小規模農園とプランテーションとの栽培面積は、ほぼ同じくらいにまで発展してきています。ただし、生産量はプランテーションが70%を占めます。
紅茶の生産地は、南部の高原地帯と、北東部、北西部ですが、最大の産地は、南部でこの地域の生産で国内生産量の約7割を占めます。年間を通しての栽培が可能で、年によって異なるものの、だいたい3万t程度の生産量があり、ほとんどがCTC製法です。
茶葉の外観は暗褐色で、水色はやや濃い赤褐色です。ケニアのCTC茶に似ていますが、ややマイルドです。
ウガンダ Uganda
中央アフリカ東部の内陸国で、ビクトリア湖を挟み、東にケニア、南にタンザニアなどと接しています。東アフリカ高原に位置するので、国内の平均標高は1100m。赤道直下とはいえ、この標高のために地域によって気候が異なります。南部は雨季が長く、北部は乾季が長いのが特徴です。
1962年にイギリスから独立しましたが、内戦状態に突入。本格的に始動した紅茶の生産は、休止に追い込まれます。しかし、1980年代に入ってからは、EUの援助などによってお茶の関係者が戻ったことなどもあり、生産が再開され、少しずつ生産量も回復していきました。現在では、アフリカ第三位の生産量に達するまでに成長しています。
茶葉の生産は通年で行われ、そのほとんどがCTC製法です。
茶葉は、外観がやや明るい褐色、水色は橙色から赤褐色で、香味はマイルド、すっきりとした飲み口が特徴です。主にティーバッグ用の原料茶となります。